ちきりんさん 「マーケット感覚を身につけよう」の感想
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ちきりんさんの新刊、「マーケット感覚を身につけよう」を読ませていただきました。とても面白い本だったので、自分の中で考えをまとめる意味でも、その感想などを書いておこうと思います。
この本を読むにあたって
ちきりんさんといえば社会派ブロガーで有名な方ですが(私の中では初期の頃の「おちゃらけ社会派ブロガー」という肩書がお気に入り)、
- 市場ラブ!
- 旅行大好き!
- ゆるく生きよう
というのが、私にとっての3大イメージです。
その中でも、ちきりんさんを最もよく表すものをひとつ上げるとすれば、「市場ラブ!」でしょうか。
普段のツイートやブログでも、市場というものを非常に重要なものと考えている、ということがよくわかります。
なので、今回の新刊、「マーケット感覚を身につけよう」は、ちきりんさんの本丸ともいうべき、最重要な本になるのでは、と思い読み進めていきました。
どういう本なのか
この本では、
- そもそも「市場」とは、どういうものなのか
- それが我々にとっていかに重要なものなのか
- 「価値の本質」を見抜くことの重要性
- 自分が持っている価値に気づくことの大切さ
- それらはすべての人に必要な能力であり
- 幸せを得る力になること
が、分かりやすく、丁寧に説明されています。
価値の本質とは
例えば、冒頭のANAの事例。
「ANAの競合は?」と問われれば、誰でもJALや格安航空会社あたりを思い浮かべるでしょう。私はせいぜい新幹線くらいまでしか思いつきませんでした。
本書ではここで、「複数の海外支社との同時会議」「家族で北海道にカニを食べに行く」といった、具体的な利用シーンが想定されます。
その結果、競合サービスにはSkype等の通信サービスや、お取り寄せ通販まで含まれる、という結論に達するのです。
つまり、航空会社のサービスを、「遠くまで短時間で移動できること」と考えると、同じく移動手段を提供する他のサービスが競合ということになりますが、顧客の利用シーン、気持ちを具体的にイメージすれば、全く違うサービスまで含まれる、という考察が得られるのです。
飛行機は移動のための手段ですが、その移動も、「会議のための手段」「カニを食べるための手段」に過ぎず、あくまで顧客目線の思考、「顧客が求める価値」を想像することが必要になり、それこそが「マーケット感覚」というわけです。
例えば私は去年Nexus5を購入しましたが、私が買ったのは4万円の最新のスマホではなく、家にこもりがちな自分が、(Googleマップによって)知らない場所へ気後れすることなく出かけるようになる体験、という事ができるわけです(実際は家で寝てる事が多いけど)。
「そこにある価値」に気づく力
先程のはビジネス寄りの話なので、自分には関係ない、という方も多いと思いますが、ビジネスとは全く縁遠いようにみえる一般の主婦も事例に挙げられています。
一番面白かったのが、「日本の普通の主婦が作るお弁当は、海外から見ればトップクラスのクオリティ」、というところ。
20年位前に観たフルハウスという海外ドラマ(以下、ちょっとうろ覚え)で、子供達の学校のお弁当に、親がピーナツバターのサンドイッチを手渡すシーンがありました。愛情あふれるファミリーもののドラマで、子供達を愛してやまない父親が、娘に手渡す弁当なのに、あまりに貧相でショックを受けた覚えがあります。が、これはアメリカやイギリスでは当たり前のことだそうで、実際、娘たちだけでなく、その友達も同じような感じでした。
本書にはまさにそのサンドイッチのことが書かれていて、確かにそれに比べたら、日本の普通のお母さんが作る普通のお弁当は、凄まじいクオリティだな、と思えました。
YouTubeでキャラ弁で検索すると、たくさんの動画が掲載されていますが、あれが海外で人気が出るのもうなずけます。
およそ市場というものから最も遠いと思われている一般の主婦が、世界に通用する価値を持っている、という視点が面白かったです。
本人はその価値に全く気づいていないが、その価値に気づく能力も、重要な「マーケット感覚」、というわけです。
(弁当作りのための各種グッズがたくさん売られていますが、ああいうのも海外で売れるかも。)
マーケット感覚は、ポジティブシンキングで鍛えられる
この本を読んで思ったことですが、マーケット感覚というのは、ポジティブシンキングの要素が強いのかも知れません。
ちきりんさんといえば、毎年冬になると電気毛布を売りまくる人、という側面がありますが、「家の中をずっと歩きまわっている人(小さな子供を抱えた主婦)には役に立たない」というツイートを受け、「同じ場所にずっと座っている受験生やプログラマにオススメです!」と売り方を変えました。
- 視点を変えることで、見えなかった価値に気づく
- 商品の良い所に目を向ける
モノを売るということは、商品の価値に気づき、良い所に目を向けるということです。
ちきりんさんは「良かった確認」(ちきりん家に伝わるポジティブシンキング)を実践していますが、先ほどの発想は、このポジティブシンキングを長年続けて鍛えられたものなのかも、と思いました。
だったら私達にもできるはず。
感想
とても読みやすく丁寧な説明で、本来ならスラスラ読めるはずです。が、読んでる中で気になった箇所、これは!と思った箇所で何度も立ち止まり、「これを他の人に伝えたい」、「自分だったらどうやって説明するだろう?」と考えてしまう。
その度に、頭の中で、家族や友人に説明するシーンを思い浮かべたりするので、読むのに時間がかかります。
また、具体的な例が沢山出てくるので、先を読み進めるのを一旦止めて、自分でも実際の例を考えたくなります。ちきりんさんの面白いアイディアや視点がこれでもかと掲載されていて、すごく面白い。
自分には何ができるんだろう、自分はどんな価値を持っているんだろう、と、ワクワクしながら読み進められました。
全体的に、一般のビジネス書とかと違って、上から目線でこうするべき、みたいな感じではなく、なんというか、優しい語り口で市場の魅力を教えてくれる感じです。
まとめ
私なりにまとめると、
マーケット感覚とは、「価値の本質を見抜く力」
ということになります。
それを身に付ければ、埋もれていた需要を掘り起こすことができるし、自分が持つ価値にも気づける。
マーケット感覚、というタイトルから誤解されるかもですが、ビジネスマンのみをターゲットにした本ではありません。
同著者の『「Chikirinの日記」の育て方』もそうでしたが、人生を豊かにしたいと願う、すべての人にお勧めできる本です。
文章はやさしく、わかりやすく、丁寧です。中学生くらいなら読み進められるでしょう。また、そのくらいの年齢の子にこそ、この本を読んでもらいたい。
以前、
ちきりん X 山下達郎 共通点1 「長く楽しまれるものを作りたい」 - koji-xの小部屋
のエントリで紹介しましたが、ちきりんさんは「数年後に読んでもおもしろいエントリ」を目指しています。
本書で説明されている「マーケット感覚」は、今後もずっと変わらない大きな価値です。10年後、20年後にも通用するし、役立てることができるでしょう。小さい頃からこの本を読んで、自由な発想や、社会に出た時のイメージを膨らませてほしいと願います。
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